横浜や神戸のような港街では、入港してくる外国の客船などを見ることがあります。港に入ってくることを「入港」と言いますが、逆に港から出発することを何と言うでしょうか?
「入る」の反対は「出る」ですから、「出港」という言葉があります。
いや、ちょっと待ってください。
同じ「しゅっこう」と読む言葉で「出航」もありますよね?
「出航」と「出港」、どちらも「しゅっこう」で船が航海に出ることですが、この二つの言葉に使い分けはあるのでしょうか?
一見、どっちでもよさそうな気がしますが、思わぬところから使い分けを知りましたので、記事にしてみました。どうぞお付き合いください。
スポンサーリンク
出航と出港の違い!
ネットの国語辞典で出航と出港を調べてみると、こうなっています。
- 出航は船や航空機が出発すること
- 出港は船が港の外へ出ること
出航は船と航空機の両方に使いますが、出港はさすがに船のみです。航空機は「空への港」である空港から離発着しますが、出港とは言いません。おそらく離陸ですよね?
ここで不思議なのは、航空機は空を飛ぶのになぜ舟へんの字なのでしょうか?
「そんなこと、考えたこともなかった!」
…と思うかもしれません。管理人もそうでした。「学校でそう習ったから」と思い込んでいました。
漢和辞典を引いてみると、「航」には空中を海にたとえて、飛行機が空中を進むことという意味もあることがわかりました。
船が海を進むことを「航海」と言いますから、飛行機が空を飛ぶ(進む)ことを「航空」というわけです。
これで、海じゃなくて空を飛ぶのに舟へんの「航空」という字なのか理由がわかりました。出航が船と航空機の両方に用いることもわかりました。
「ちょっと待って! 船の場合の使い分けは?」
…そうでした。知りたいのはココでした!
船の場合は出航と出港、どちらも意味が通りますし、港を出て航海に出るという意味では違いがないように思えます。
「結局、ナンノコッチャ? 違いがわからないぞ!」
海上自衛隊ではどうしているか?
出航と出港の使い分けについて、日常で使う分にはどっちでもよさそうですけど、先日たまたま管理人はこんな情報を知りました。
船舶なくしては仕事が成り立たない、海上自衛隊ではこの2つの言葉を使い分けているそうです。使い分けはコレです。
- 出航は定期航路などの客船が航海に出ること
- 出港は軍艦などが不定期に港を出て航海すること
「なるほど!(^-^)」
海上自衛隊の関係者から教えてもらったのですが、こんな使い分けをしているんですね。
この使い分けに従うと、寄港した外国の客船が航海に出るときは「出航」になるといえます。横須賀から護衛艦が航海に出るなら「出港」ですね。
ただ、この使い分けにある「不定期に港に出る」に若干の切なさを覚えるのは管理人だけでしょうか? 軍艦などに用いるという言葉から、「帰ってこられるとは限らない」という意味を含んでいる気がします。

出航(出港)に似た言葉
出航(出港)に似た言葉を集めてみました。
- 出帆(しゅっぱん)
- 出船(しゅっせん)
- 船出(ふなで)
- 抜錨(ばつびょう)⇒ 錨を上げて出帆すること (※対義語は投錨(錨を降ろすこと))
- 解纜(かいらん)⇒ 船が航海に出ること
「出帆」は読んで字のごとく帆を張る帆船に使いたいですし、「船出」は「新生活への船出」といった感じで比喩的にも使います。
さらに英語では
- 出航(名詞) ⇒ sailing, a ship casting off
- (船が)出航する ⇒ cast off, set sail from
- 出港する ⇒ leave port
- (飛行機が)出航する ⇒ take off
となっています。
「船が横浜から大阪へ出航した」なら “The ship set sail from Yokohama for Osaka.” ですね。ちなみに、「飛行機が定刻に出航した」なら “The airplane took off on schedule.” です。離陸も take off と言いますから、英語は日本語よりシンプルと言えるかもしれません。
【関連記事】
まとめ
出航と出港の違いをまとめてみました。
国語辞典では意味にほぼ違いはありませんが、海上自衛隊の『業界用語(?)』では次のように使い分けているそうです。
- 出航は定期航路などの客船が航海に出ること
- 出港は軍艦などが不定期に港を出て航海すること
文章を書く機会があるとき、船が航海に出ることを表現するのに、ここで紹介した使い分けをして表現してみるのはいかがでしょうか?(^_^)v
スポンサーリンク
コメント
漁船だとどっちを使うんでしょうね?
コメントありがとうございます。
漁船は定期航路とはいえないから、出港じゃないでしょうか?
管理人の個人的見解です。
軍艦か航路船で違いがあるのではなく、言葉の重点がどこにあるかで決まるのではないでしょうか。
出航=船(舟)がどうなったのかに重点を置き、船(舟)は出発したと表現したいから出航。この場合、錨を降ろして停泊している海賊船がグランドラインという航路に向けて動き出しても出航なわけです。
出港=港の船(舟)がどうなったのかに重点を置き、港を出ていったので出港。つまり、船(舟)は港を出て言ったと言いたい場合、軍艦だろうと航路船だろうと出港。
船(舟)と表記したのも、対象となるサイズも関係ないからです。どっかの社長の所有する小型のクルーザーであっても海に向けて動き出せば出航は出航で、出たのが港であって、港を出たと言いたいなら出港です。
と、私は考えます。
慶應義塾大学法学部
ジャスティス
こんにちは。
コメントありがとうございます。
記事にある海上自衛隊での使い分けは、記事中でも触れいているとおり、
海上自衛隊の関係者から聞いたものです。
一種の業界用語としての使い分けだろうと考えます。
特定の業界において、辞書上の意味を超えた意味づけをしていることは
決して珍しいことではないと思っており、記事では海上自衛隊での
使い分け例として紹介したつもりです。
頂いたコメントも一つの考え方だと思いますし、
貴重なご意見ですので、近いうちに記事に反映したいと思っています。